アパート経営における利回りとは?
アパート経営における利回りとは、投資額に対するアパートの運営から得られる収益の割合です。実際には、利回りにはさまざまな種類、計算方法があり、その時代や経済情勢、地域によっても期待される利回りは異なってきます。
土地を所有しており、有効な土地活用の方法を探している人のなかには、「アパート経営で期待できる利回りはどのくらい?」「期待する利回りを求めるうえで注意すべきことは何?」といった疑問がある方もいるのではないでしょうか?
この記事では、アパート経営の利回りの種類や計算方法、実際の相場や注意点を紹介していきます。
アパート経営の利回りの種類や計算方法
アパート経営における利回りは、土地活用として不動産投資する際の重要な指標になります。一般的に利回りはリスクと相関関係があり、リスクが高いほど利回りも高く、リスクが低いほど利回りも低くなる特徴があります。つまり、高い利回りを求めることは見合ったリスクを取るということであり、ハイリスク・ハイリターンな投資になってしまうといえるでしょう。
利回りとひとくちにいっても、実は利回りにはさまざまな種類があり、それぞれ計算方法が異なります。代表的な利回りの種類とその計算方法は以下の通りです。
・表面利回り
・実質利回り
表面利回り(グロス利回り)
アパート経営の表面利回り(グロス利回りとも呼ばれる)とは、アパート経営で得られる家賃収入等の1年間の収入を不動産の購入価格(物件価格)で割ったものを指し、投資対象として判断するための目安として不動産会社から提示されることの多い利回りです。
表面利回りの計算では、税金や修繕費といった運用するうえでの諸経費を考慮していないため、後述する
実質利回りよりも高い利回りとなる特徴があります。表面利回りの計算式は以下の通りです。
表面利回り(%) = 年間の家賃等の収入 ÷ 不動産の購入価格 × 100
たとえば、不動産の購入価格が5,000万円で年間の家賃収入が500万円、管理費や共益費が21万円、駐車場収入が6万円の場合、アパート収入は合計527万円で、表面利回りは10.54%となるわけです。
この式での「年間の家賃等の収入」とは、年間の家賃だけでなく、管理費や共益費、アパートに付属する駐車場収入、アパートに設置されている自動販売機の収入などアパートから得られる収入全てを含みます。これらは過去1年間の実績だけでなく、満室を想定して1年間に予想される収入で求める場合もあります。
なお、表面利回りは、ほかの物件と同じ条件でその収益性を比較できるようにするために、空室があったり、利回りの実績がない新築アパートであったりしても満室である場合を想定して利回りを算出することが一般的です。このように、満室を想定した収入で利回りを計算する場合は想定利回りと呼ばれることがあります。
満室想定(想定利回り)は、利回りを高く見せるために、相場から見て高い家賃想定となっていることもあるため、判断の際には家賃設定にも注意しましょう。
実質利回り(ネット利回り)
「実質利回り」とは、年間のアパート収入から、税金や修繕費、管理・運用費・保険料といった年間の経費を差し引いた実質的な収入を、不動産購入価格に取得経費を加えた金額、または建築費をはじめとした建築にかかった投資額全体で割ったもので、ネット利回りとも呼ばれます。
運営に必要なさまざまな経費を差し引いた後の収入の割合を求めた利回りなので、表面利回りと比べ実際に運営した場合に近い利回りを求めることができます。ただし、実際にアパート経営を始めると、予期せぬ出費や想定以上の空室が発生する恐れもあるので、実質利回りについてもあくまで参考と考えたほうがよいでしょう。
なお、実質利回りは以下の計算式で求められ、実質利回りの場合でも満室を想定した利回り計算(想定利回り)を行うことがあります。
実質利回り(%) = (年間の家賃等の収入 - 年間経費) ÷ (不動産の購入価格 + 購入時諸経費) × 100
アパート経営における利回りの目安や最低ライン
アパートを建てる立地や、建物・設備のグレードなどよって家賃が異なり、また新築・購入時に借り入れするローンの内容によっても期待する収益は異なります。加えて、アパート経営は不動産投資であるため、そのときの経済情勢によっても期待できる利回りは変わるでしょう。
従って、目標とする利回りは投資する人の状況やその時代によってそれぞれですが、リスク管理のためにも利回りの最低ラインは知っておく必要があるといえます。利回りの最低ラインについては、空室リスクや修繕費用などの予期せぬ出費のほか、ローンの返済に備えることを考えると、地域によって差はあるものの特にローンを利用する場合は最低4~5%程度が目安となるでしょう。
参考までに、現在の一棟アパート(土地と建物を同時に売り出している)の売り出し事例※1 から、以下の都道府県ごとに平均的な表面利回りの目安を紹介します。
表1:都道府県ごとの平均表面利回り ※1
都道府県 |
想定利回り (%) |
東京都 |
5.1 |
神奈川県 |
6.4 |
千葉県 |
6.2 |
埼玉県 |
6.4 |
愛知県 |
7.2 |
大阪府 |
5.6 |
北海道 |
7.9 |
宮城県 |
7.5 |
福岡県 |
6.4 |
※1 2023/11/28 時点での三井のリハウスの投資用物件・アパートとして掲載されている物件のなかから、エリアに重複がないように抽出した想定利回りで算出。
上の表からも分かるように、東京都・神奈川県・大阪府といった都市部地域では住宅需要が大きく経営リスクが低いうえに、アパートを取得するための初期費用、特に土地も合わせて購入する場合は高額になるため、結果として利回りが低い傾向にあります。
なお、所有している土地にアパートを新築する場合は、上記にある土地建物を一体として売り出している場合の表面利回りより土地購入費がかからない分、期待する表面利回りの目安は高くなります。
具体的な利回りの上昇幅については、地域やその土地の立地条件などにより異なるものの、土地建物を同時に取得する場合と比べて、既に土地を所有してアパートを建築する場合はプラス3~5%程度高い表面利回りが目安になるでしょう。
アパート経営は成功しにくい?
アパート経営を考えている人のなかには、「アパート経営はリスクが高いのか?」、「アパート経営は失敗しやすい?」と疑問に思っている方もいるのではないでしょうか?結論、アパート経営はミドルリスク・ミドルリターンな土地活用方法といえ、リスクはある程度オーナーの判断でコントロールでき、一定の収益は期待できる投資となります。
なぜなら、アパート経営では、不動産の価値がゼロになることはまずありません。投資額が比較的大きく(投資リスク)、空室リスクや修繕リスクなどはあるものの、家賃等を調整して入居者が入るように工夫すれば、一定の安定した収入が期待できる投資だからです。
たとえば、株式投資のような金融資産の運用では自分で何かリスクをコントロールすることはできませんが、アパート経営では、空室リスクであれば家賃や募集条件の設定を変える、災害リスクであれば火災保険や地震保険に加入するといった、リスクへの対応を取ることができます。このように、オーナーがある程度リスクをコントロールできる点で、ハイリスク・ハイリターンな投資とは異なるといえます。
アパート経営がうまくいかない理由は複数考えられますが、代表的な理由は以下の5点です。
・空室が埋まらない
・家賃が想定より安くなる
・修繕費が収入に対して高い
・ローンの返済ができない
・災害で家賃が入らない、あるいは支出が増える
いずれも新築・購入時の経営計画と、実際の運営に乖離があることによって起こる問題であり、取得当初の甘い見込みが失敗の原因の1つとなります。アパート経営を失敗しないためにも、失敗の原因となり得るリスクについて以下で詳しく見ていきましょう。
空室リスク
空室は、アパート経営では回避することができないリスクの1つです。空室状態が続き、空室率が高くなると家賃収入が入らないため、想定しているより収入が減り、当初の利回りより下がってしまいます。よほど人気の高い物件でない限り、入居者の入れ替えのタイミングで空室期間は発生してしまいますが、いかに空室期間を長引かせないかがリスクを抑制するポイントです。
そのためには、「家賃を許容できる範囲で値下げする」「入居条件を緩和する」など、オーナーの判断で対応する必要があります。特にアパートローンをはじめとした不動産投資用ローンを利用している場合、空室が増えれば月々のローンの返済が苦しくなる可能性もあるため、空室が長引かないよう早期に対応することが重要です。
家賃下落リスク
経年劣化によるアパートそのものの魅力の低下や、競合となるアパートが周辺に新たに建築されたなど、さまざまな理由から入居者がなかなか入らなくなってしまった場合、家賃を値下げしなくてはならない場合もあります。
入居者が入らなければ、その部屋の家賃収入がゼロになってしまうため、家賃を下げてでも入居者を入れ、収入を確保するほうがアパート経営では得策になります。
ただ、一般的に築年が増えるに従って家賃が下がっていくもののため、当然、期待される利回りも新築当時と比べて築年がたてば低いものになります。当初の計画段階から、築年が経過した場合の収入については、低くなることを想定しておくことが必要です。
特に不動産投資用ローンを利用する場合は、将来の修繕費等の支出の増加や家賃の下落による収入の減少を想定して、それでもローン返済ができる資金計画とすることが大切です。
修繕リスク
アパート経営において、大きな負担の1つとなってくるのが、管理・維持にかかる修繕費です。国土交通省が統計を取ったデータのなかに、木造10戸(1LDK~2DK)のアパートと木造10戸(1K)の場合の築年数に応じてかかった修繕費の平均データを示したものがあります。以下にそのデータを抜粋してご紹介しますので、参考に見ていきましょう。
表2:木造アパートの築年数ごとの修繕費目安 ※2
<1LDK~2DK>
築年数 |
1戸あたりの負担金額 |
5~10年 |
約9万円 |
11~15年 |
約64万円 |
16~20年 |
約23万円 |
21~25年 |
約98万円 |
26~30年 |
約23万円 |
<1K>
築年数 |
1戸あたりの負担金額 |
5~10年 |
約7万円 |
11~15年 |
約52万円 |
16~20年 |
約18万円 |
21~25年 |
約80万円 |
26~30年 |
約18万円 |
※2「民間賃貸住宅の計画修繕ガイドブック」国土交通省 住宅局住宅総合整備課賃貸住宅対策室発行より
以上のデータから分かるように、11~15年目や21~25年目は経年劣化によって、屋根や外壁の塗装費用などの大規模な修繕が必要となるため、ほかと比べて高額になる傾向があります。さらに、築年数が増えれば増えるほど、家賃は下がる傾向があり、一方修繕費は上がることが予測されるため、修繕にかかる費用をあらかじめ想定して、新築あるいは購入当初から修繕費を積み立てておかなければなりません。
ローンの金利上昇リスク
不動産投資用ローンは、金利が1~5%程度とばらつきはあるものの、アパート収入が安定して期待できる場合は、比較的低い金利で利用できることに加え、融資期間も最長30~35年と長期間であることが特徴です。ただし、多くの不動産投資用ローンは、変動金利型が主流であるため、ローンを利用してアパート経営を行う場合は、金利変動リスクがあります。金利が上昇することで、毎月の返済額が増え、経営を圧迫する可能性もあります。
なお、金利上昇のリスクヘッジをするには、頭金を入れてローンを借り過ぎないことが基本です。また、途中余裕があれば繰り上げ返済することも大切です。
災害リスク
地震や台風などの自然災害や火災といった災害によって、建物が損傷、倒壊あるいは全焼してしまった場合、補修や再建には大きな資金が必要となります。そのとき、火災保険や地震保険などに加入していないと、全てを自己資金で用意しなければなりません。もし、ローンを利用して新築、購入していた場合、資金がなければ、建物を復旧できず返済するための家賃収入が得られないため、最悪、破綻することもあり得ます。
そうした事態にならないよう、災害リスクに対するリスクヘッジとして、火災保険や地震保険へ加入することが重要です。
また、保険金が給付され、建物の補修、建て替えができたとしても、再び収益化するまでにはある程度の時間を必要とするため、その間の費用の支払いやローン返済に備えて、資金を蓄えておくことも必要でしょう。
●アパート経営で失敗するケースやその対策に関する記事は
こちら
●アパート経営にかかる初期費用に関する記事は
こちら
アパート経営で期待する利回りが得られないなら駐車場経営を検討してみよう
以上のように、アパート経営ではさまざまなリスクがあるものの、それらに対してオーナーの判断で、適切に対応あるいは事前に備えることができる点が特徴のミドルリスク・ミドルリターンの土地活用であることをご紹介しました。
しかし、土地活用を検討している方のなかには「土地活用はしたいけれど、リスクが心配」「アパート管理のような手間をかけずに手軽に土地活用がしたい」と思う方もいらっしゃるのではないでしょうか?
駐車場経営はそのような人におすすめの土地活用です。経営方式にもよりますが、駐車場経営はアパートやマンション経営をはじめとした賃貸経営と比べて少ない初期投資で、比較的安定した収益が期待できます。特に一括借り上げ方式と呼ばれる経営方法の場合、初期費用は不要で、駐車場経営は専門の事業者が行うほか、毎月決まった賃料を借地料として安定して得ることができます。
また、駐車場経営では、建物を建てることがないため、駐車場の開設・撤収も容易で、撤収後すぐにほかの土地活用に転換したり、自分が住むための住宅を建てたりといった転用性・流動性の高さも特徴です。
三井のリパークでは、事業者が設備の導入や運営にかかる費用を負担する一括借り上げ方式を選べるため、土地のオーナーが自身で運営する場合よりも初期費用を抑えることが可能です。アパート経営より手軽でリスクの少ない駐車場経営をしたいと考えている人は、ぜひ三井のリパークにご相談ください。※3
●駐車場経営や土地活用のご相談・お問い合わせは
こちら
●駐車場経営を成功させるポイントに関する記事は
こちら
※1出典:グループ企業「三井のリハウス」の不動産投資用アパート物件の掲載情報より算出。
https://www.rehouse.co.jp/buy/tohshi/
(最終確認日:2023年11月28日)
※2出典:「民間賃貸住宅の計画修繕ガイドブック」、国土交通省 住宅局住宅総合整備課賃貸住宅対策室
https://www.mlit.go.jp/common/001231406.pdf
(最終確認日:2023年11月28日)
※3 立地等によってはお受けできない場合もございます。また、建物解体、アスファルト舗装、外構、固定資産税などの租税公課や町内会費はオーナーさまのご負担となります。