2024.10.17

アパート経営をやめたいときはどうする?やめる方法やタイミングを解説

アパート経営をやめたい場合、アパートごと売却するのか、建物を解体するのかで手順が異なります。本記事ではアパート経営をやめる方法やタイミング、手順について詳しくご紹介します。
監修者:ファイナンシャル・プランナー 大石 泉
株式会社NIE.Eカレッジ代表取締役。CFP®、1級ファイナンシャル・プランニング技能士などの資格を保有。住宅情報メディアの企画・編集などを経て独立し、現在ではライフプランやキャリアデザイン、資産形成等の研修や講座、個別コンサルティングを行っている。
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アパート経営をやめたい!やめるのに適切なタイミングとは?

アパートを経営していてやめたいと判断するタイミングやきっかけは人それぞれですが、主なやめ時は以下の通りです。
・赤字経営が続いている場合
・節税効果が低下した場合
・経営の意思はないが、アパートを相続した場合
順番に解説します。

赤字経営が続いている場合

アパートやマンション経営といった賃貸経営をやめるタイミングの1つに、赤字経営が続いていることが挙げられます。アパートが赤字経営に陥りやすいケースは、大きく分けて次の2点です。
・空室の割合が増える
・維持費や修繕費の負担が増える
空室の割合が増えると、収入減に直結します。空室が増える要因は、アパートの経年劣化や、近隣に競合アパートが建設されることなどが考えられます。物件の空室を埋めようと家賃を下げれば、以前同様の収入を得るのは難しくなるでしょう。
また、維持費や修繕費の負担は、築年数がたつほど修繕すべき箇所が目立ってくるため、支出が増える懸念があります。アパート経営を不動産投資として収益物件にすることを目指している場合、初めは黒字経営でも、将来的な赤字経営の可能性は捨てきれないため、継続的な赤字経営の改善が見込めないようならやめるタイミングといえるでしょう。

節税効果が低下した場合

節税のためにアパート経営を行っている場合は、建物の減価償却期間が終わったときを、やめるタイミングとしてもよいでしょう。ここでいう減価償却とは、建物の取得にかかった費用を法定耐用年数で分けて経費計上することをいいます。
アパート経営の収益は、不動産所得として毎年、確定申告を行う必要があります。確定申告の収支内訳書には「減価償却費」の項目があり、建物の取得にかかった費用を1回で計上するのではなく、法定耐用年数で分割して計上することが可能です。そのため、アパート経営による収入は減価償却費が入る分、少なく計上でき、ほかの収入と不動産所得を合算して損益通算ができるため、所得税や住民税を減らせる場合があります。
しかし、アパートの築年数が経過すると減価償却期間が少なくなる、または終了するため、節税効果が低くなったり、得られなくなったりします。節税目的でアパート経営を行っている場合は、節税効果を感じられなくなったタイミングが1つのやめ時です。

経営の意思はないが、アパートを相続した場合

相続や贈与に伴ってアパートを取得した場合だと、経営の意思がないこともあるでしょう。そのようなときは被相続人や贈与者がアパート経営を行っていたからといって、無理に経営を続ける必要はありません。
アパートが遠方であったり、規模が大きかったりすると、管理のための時間と費用がかかって負担になってしまうでしょう。
経営中の賃貸アパート

アパート経営をやめたいときに検討すべき2つのこと

アパート経営をやめたい理由が、アパートの赤字経営や建物の老朽化といった理由であるときに検討すべきことは以下の2点です。
・アパートの処分方法
・入居者への対応
それぞれ詳しく解説します。

アパートの処分方法

アパート経営をやめたい場合、まず検討したいのはアパートの処分方法です。処分方法は「アパートの建物を土地ごと売却する」「アパートの建物を解体して更地にする」という2つの方法があります。

アパートの建物を土地ごと売却する

アパートの建物を土地ごと売却する方法は、オーナーチェンジと呼ばれます。借地借家法上、アパートを売却したいというオーナーの都合だけでは、入居者を退去させることはできません。そのため、既に入居者がいる場合は、建物と土地をまとめて売る方法が適しています。
また、建物の築年数が浅く、土地と建物を合わせた資産価値が高い場合も、そのまま売却したほうがよいことがあります。ただ、分譲マンションや一戸建ての売却と比べると、アパート一棟の購入希望者は少なくなるでしょう。加えて、ローンの残債がある場合は返済のうえ、抵当権の抹消を行い、買い手を探しましょう。

アパートの建物を解体して更地にする

アパートの建物を解体し、更地にして売却する方法もあります。入居者がいない、あるいは築年数の経過で資産価値が下がっている場合に適しているでしょう。なお、建物の激しい老朽化がアパート経営をやめる原因であれば、借地借家法上の「正当の事由」になるため、入居者に退去を求められます。
この場合、解体費用や立ち退き料などのコストはかかるものの、土地が残るため、自身の住宅が建てられる、新たな土地活用が始められるといったメリットが得られます。

入居者への対応

アパートの建物と土地をまとめて売却する場合、売主は新しい買主に所有権を移転します。一般的には、移転とともに入居者に「賃貸人変更通知書」が発行されます。法律上、賃貸人変更通知書の発行義務はありません。ただ、大家の変更に伴って賃貸契約条件や敷金の返還義務、賃料の振込先などが変わることがあるため、入居者への通知として、書面で残すのがよいでしょう。
入居者がいる状態でアパートの建物の解体を検討する場合、入居者の退去交渉から始めましょう。借地借家法では借主にあたる入居者の権利が手厚く保護されており、退去交渉では貸主が借主に立ち退き料を支払うケースが多くなっています。
立ち退き料は家賃の6ヵ月~1年分と幅があり、立ち退きを求める理由によって金額が変わります。たとえば、建物の老朽化が激しいといったやむを得ない理由の場合は、立ち退き料が安くなりますが、建て替えやリフォームといった貸主都合の場合は、金額が高くなる傾向にあります。
アパート経営には、入居者対応が付き物です。入居者それぞれにも生活があるため、アパート経営をやめたい場合は、対応方法について不動産会社と相談しつつ、細心の注意を払って対応しましょう。
アパートの前で悩む男性)

アパート経営をやめる際の流れ

アパート経営をやめるときの流れは、以下の3ステップです。
[ステップ1] 入居者への通知
[ステップ2] 公共料金や通信契約の解除
[ステップ3] 廃業届といった各種届け出の提出
1つずつ解説していきます。

[ステップ1] 入居者への通知

これまでお伝えしてきた通り、アパート経営をやめるには、土地と建物をまとめて売却するか、建物を解体するかで対応が異なります。
アパートの土地と建物をまとめて売却する場合は、所有権移転の手続きと賃貸人変更通知書の発行をしましょう。アパートの建物を解体する場合は、入居者への通知と立ち退き料の交渉を行います。通知は、立ち退き日の6ヵ月前までという義務があります。入居者との話し合いが必要なこともあるため、スケジュールに余裕を持って進めましょう。

[ステップ2] 公共料金や通信契約の解除

アパート経営をやめる際は、電気・ガス・水道といった公共料金や、インターネットやテレビ回線の解約を忘れないようにしましょう。契約解除を忘れていると、たとえ使用していなくても基本料金がかかってしまいます。

[ステップ3] 廃業届といった各種届け出の提出

アパート経営から退くには、管轄の役所に、複数の届け出をしなければなりません。個人事業主であれば、以下2点の提出が必要です。
・廃業届
・所得税の青色申告の取りやめ届出書
廃業届は、廃業してから1ヵ月以内の提出が求められます。所得税の青色申告の取りやめ届出書は、青色申告をしない年の翌年3月15日までに提出しなければなりません。それぞれ期限があることに注意しましょう。
開業・廃業届出書と文房具

アパート経営をやめる際にかかる費用

ここではアパート経営をやめる際にかかる費用について、「アパートの建物ごと売却する場合」「アパートの建物を解体する場合」の2つに分けて解説します。

アパートの建物ごと売却する場合

アパートの建物ごと売却する場合にかかる費用は、以下の2つです。
・抵当権抹消費用
・譲渡所得にまつわる税金
抵当権抹消費用は、土地と建物のそれぞれに1,000円かかります。従って、アパートの建物ごと売却するなら、かかる費用は2,000円です。手続きを司法書士に依頼すると、別途1万5,000円程度かかります。
譲渡所得にまつわる税金は、アパートの売却で利益を得たときにかかる税金のことです。状況によって税率が異なるため、詳しくは国税庁のサイトをご確認ください。
●譲渡所得にまつわる税金について詳しくはこちら

アパートの建物を解体する場合

アパートの建物を解体する場合にかかる費用は、以下の2つです。
・解体費用
・建物滅失登記の提出にかかる費用
解体費用は、アパートの材質や規模によって左右されます。建物が頑丈なほど、解体費用は高くなる傾向があります。費用相場は、専門の解体業者に確認しましょう。
建物滅失登記とは、建物を解体し、登記が消滅したことを法務局に届け出るものです。建物滅失登記の提出は数千円程度で済みますが、作成する書類が複雑なため、土地家屋調査士に依頼するのが一般的です。費用は3~5万円程度かかります。
住宅図面と家と電卓

アパート経営をやめたいときの注意点

アパート経営をやめたい際の注意点は、各種届け出を期日内に漏れなく提出することです。自身が金銭的な損をするほか、オーナーチェンジで売却する際には新たな買主に迷惑が及ぶことも考えられます。
また、解体して更地にする場合は、入居者の立ち退き交渉が難航したら、弁護士への依頼も検討しましょう。立ち退き料は法律で支払いが義務付けられているものではありません。立ち退きを要求する事情に応じて金額が異なるため、個人での判断が難しいときは無理なく相談しましょう。

アパート経営をやめたいときは、ほかの土地活用方法も検討しよう

ここまでお伝えしてきたように、アパート経営はやめたいと思ったタイミングで、すぐにやめられるものではありません。
アパート経営が赤字に陥る理由は、収益の低下によって、借入金の負担が重くなることです。ご紹介してきた通り、空室の割合が増えたり、入居者獲得のために家賃を下げたりすると収入が減ります。一方で、維持費や修繕費などは引き続き一定の支出があるでしょう。手元に資金がないからといって、修繕などの追加投資を怠ると、ますます空室が出てランニングコストが確保できない悪循環に陥る可能性もあるのです。
アパート経営以外にも、土地を有効活用する方法はいくつかあります。なかでも、比較的安価に、気軽に始められるのが駐車場経営です。運営方式によっては初期投資や、継続的な追加投資が不要なこともあります。駐車場は建物がないため、メンテナンスの負担が少なく済むのもメリットです。また、もし駐車場経営から撤退するとしても、建物の引渡しや解体の手続きがないので、進めやすいでしょう。
●駐車場経営にかかる初期費用や基礎知識に関する記事はこちら
車のない駐車場

アパート経営をやめたいときは、駐車場経営での再活用を検討しよう

これまでアパート経営をやめたい方に向けて、やめるタイミングや事前に検討すべきこと、かかる費用や注意点について解説してきました。アパート経営をやめるまでの準備や手続きは、入念に行いましょう。一方で、アパート経営をやめた後の資産計画や土地運用をどうするのかなど、対策として出口戦略も考えておかなければなりません。
たとえば、老朽化したアパートを解体して更地にした場合は、駐車場経営がおすすめです。必要な設備が少なく設置や撤収が容易であるうえ、ほかの土地活用方法に比べると初期費用や追加投資費用を抑えて安定収入を得られる点がメリットです。
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●初心者でも始めやすい駐車場経営のメリットと成功のポイントに関する記事はこちら
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